入居者からIT重説でカメラオフを求められても、管理会社として認めるのは原則避けてください。

国土交通省のガイドラインでは「双方向で映像を視認できる環境」がIT重説の成立要件とされており、借主側のカメラオフはこの要件を満たさない可能性があるためです。ただし法的にカメラが特に重視されるのは宅建士側であり、借主側のカメラ義務には制度上のグレーゾーンも存在します。

本記事では、カメラオフに関する法的根拠を国交省ガイドラインに基づいて整理したうえで、カメラオフのまま進めた場合に管理会社が負うリスク、適切な対応策、当日のカメラトラブル時に標準化すべき対処手順までを解説します。自社の運用方針を明確な根拠とともに固めるためにお役立てください。

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入居者にIT重説のカメラオフを認めてよい?国交省ガイドラインから見る結論

結論から言えば、入居者からカメラオフを求められても、管理会社として認めるのは原則避けるべきです。国交省ガイドラインがIT重説の要件として「双方向で映像を視認できる環境」を求めているため、借主側のカメラオフはこの要件に抵触する可能性があります(出典:公益社団法人 全日本不動産協会(国土交通省調査)「IT重説のためのIT環境」)。

以下では、その根拠の中身と、入居者が信じがちな「オフでも大丈夫」という情報の正確性を順に確認します。

カメラオフが「原則不可」とされる法的根拠

入居者に示せる根拠の中心は、国交省の実施マニュアルが定める映像環境の要件です。具体的には、「図面等の書類および説明の内容について十分に理解できる程度に映像を視認でき、かつ、双方が発する音声を十分に聞き取ることができるとともに、双方向でやりとりできる環境において実施していること」とされています(出典:公益社団法人 全日本不動産協会(国土交通省調査)「IT重説のためのIT環境」)。

この「双方向でやりとりできる環境」がIT重説の成立要件であり、入居者側のカメラがオフのままではこの条件を満たさないおそれがあります(出典:公益社団法人 全日本不動産協会(国土交通省調査)「IT重説のためのIT環境」)。

一方で、借主側のカメラ義務が条文上明確かというと、そうとは言い切れません。全日本不動産協会のFAQでは「カメラが重要となるのは、宅建士側で宅建士証や説明に要する図面等を表示するためである」と記載されており、借主側カメラについて明確な義務の文言は置かれていません(出典:公益社団法人 全日本不動産協会(国土交通省調査)「IT重説のためのIT環境」)。つまり借主側のカメラオンは、法文上のグレーゾーンを含んでいます。

もっとも実務では、本人確認のため借主にもカメラオンを求めるのが一般的です。グレーゾーンがあるからこそ、管理会社が自社の運用方針を定め、申込時に「重説はカメラオンで実施する」と入居者へ案内しておくのが確実です。担当者ごとに対応が分かれて社内基準が定まらない状態を防ぐ意味でも、方針の明文化が役立ちます。

入居者が信じがちな「オフでも大丈夫」は本当か

不動産会社によって運用が異なるため、「カメラオフでも大丈夫だった」という体験談が生まれることはあり得ます。

ただし法的要件上は双方の映像環境が前提である以上、入居者の体験談だけを根拠に手続きを進めさせるのは会社にとって危険です。誤解している入居者には、体験談と法的根拠は別物であることを丁寧に案内し、原則オンで進める理由を伝えてください。

カメラオフのまま重説を進めるとどうなる?管理会社が負うリスク

入居者の要望に押されてカメラオフのまま重説を進めると、法的要件を満たさず、重説のやり直しが必要になるリスクを管理会社が負います。要件を満たさない手続きは、後から「正規の重説として成立していたのか」を問われたときに、会社側が弱い立場に立たされます。

さらに、将来トラブルが発生した際の不利にもつながります。要件を欠いた手続きは、入居者側から「説明が不十分だった」と主張される根拠になり得るためです。契約後に設備や条件をめぐって争いが生じたとき、手続きの不備が会社の説明責任を問う材料にされかねません。

ただし、過度に不安を抱く必要もありません。「カメラオフだから契約が即座に無効になる」とまで断定された扱いが確立しているわけではなく、リスクの程度は自社の運用や個別の状況に左右されます。とはいえ、不確実なリスクをわざわざ抱え込む理由はないため、安易に要望を受け入れず原則オンで進める判断が妥当です。

顔出し・非対面に抵抗のある入居者にどう応えるか

カメラオフは認められませんが、入居者の顔出しや部屋映りへの不安を、断らずに軽減する手段は複数あります。

マスクやバーチャル背景の案内で多くの不安は解消でき、それでも難しい入居者には対面重説への切替を用意することで、要望を頭ごなしに断らずに離脱を防げます。具体的な案内は次の2つに分けて見ていきます。

マスク・バーチャル背景を入居者に案内する

最もハードルの低い案内は、マスク着用の許容です。不動産会社によってはマスクを着けたままの受講を認める場合があるため、入居者は顔の大部分を隠した状態で重説を受けられます。顔をはっきり見られたくないという不安には、まずこの選択肢を提示してください。

部屋の様子を映したくないという不安には、ZoomやLINEのバーチャル背景機能が使えます。背景を画像に差し替えれば自室を映す必要がなくなるため、生活空間が相手に見える心配を取り除けます。

顔を映す場面についても、案内の仕方で不安は和らぎます。身分証を提示する際はカメラに顔を近づける必要がありますが、それは一時的な確認のためであり、重説の最初から最後まで顔を画面中央に映し続ける必要はありません。「顔を映すのは本人確認の一瞬だけ」と具体的に伝えると、入居者は見通しを持って臨めます。

どうしても難しい入居者には対面重説への切替を用意する

そもそもIT重説は入居者の同意が前提であり、オンラインでの実施を強制するものではありません。マスクやバーチャル背景を案内しても、カメラオンにどうしても強い抵抗がある入居者には、対面での重説に切り替える道を用意できます。無理にオンラインで押し通そうとせず、代替手段があることを伝えるだけでも入居者は安心します。

ただし対面への切替には日程や場所の調整が必要になります。直前に切り替えると入居スケジュール全体に影響するため、管理会社は申込の段階で「対面への切替も可能です」と早めに案内し、切替の導線をあらかじめ整えておいてください。

当日にカメラが映らないとき管理会社が取るべき対処フロー

入居者がカメラオンで臨む意思を持っていても、当日の通信や機器の不調でカメラが映らなくなることはあります。混乱を避ける鍵は、事前案内とトラブル時の手順を社内標準として決めておくことです。まずは予防のため、管理会社から入居者へ次の点を事前に案内してください。

  1. カメラとマイクが正しく動作するかを、当日までに一度確認しておくこと
  2. 通信が途切れにくい、安定したWi-Fi環境で受講すること
  3. 当日使うアプリケーションのインストールと起動を、事前に済ませておくこと

事前案内をしても、当日に映像が途切れる事態は起こり得ます。その場合の流れは、宅建士側が主導してください。映像や音声に支障が生じた時点で、宅建業法に基づき宅建士側がIT重説を即座に中断します。

続いて再接続や機器の再起動で復旧を試み、状況を入居者と共有しながら短時間で見極めます。

復旧できない場合は、別日程での再実施か、対面での重説に切り替えるのが正しい対処です。この「中断→復旧を試みる→復旧しなければ日程変更か対面切替」という流れを社内標準として定めておけば、担当者が現場で判断に迷わず、入居者を待たせる混乱も防げます。

まとめ

入居者からのカメラオフ要望は、国交省ガイドラインの双方向映像という要件に照らして原則認められません。ただし背景にあるのは顔出しや非対面への抵抗という実需であり、管理会社はその不安を断らずに解いて契約離脱を防ぐ運用を整えることが最善策です。

具体的には、カメラオンが必要な理由を法的根拠とともに説明できるようにし、マスク着用やバーチャル背景、対面重説への切替といった選択肢を申込時から案内します。あわせて、当日のトラブル時に宅建士側が中断・切替を主導する手順も社内標準として決めておけば、担当者ごとに対応が割れることもなくなります。まずは自社の運用方針を一枚にまとめ、申込時の案内に組み込むところから始めてください。

もっとも、重説をオンライン化しても、内見で営業担当の同行が残るかぎり、入居者の非対面ニーズには応えきれず機会損失も残ります。非対面で完結する賃貸オペレーションを目指すなら、内見の段階から接触を減らすことが欠かせません。無人内見くんは営業同行なしで入居者が物件を自由に見学でき、内見から重説までを非対面でつなげられるため、営業工数と機会損失を同時に減らしながら、入居者が安心して契約まで進める導線を整えられます。