住宅業界の集客環境は年々厳しさを増しており、広告費の高騰や消費者行動の変化により、従来の手法だけでは成果が上がりにくくなっています。

最新のデータをもとに集客が難しくなっている背景を分析し、オンライン・オフライン・DXを活用した効果的な集客アイデアを徹底解説します。

住宅会社の集客が難しくなっている原因

住宅業界における集客は、近年著しく変化しています。従来の手法だけでは成果が上がりにくくなり、多くの住宅会社・工務店が新たな集客戦略を模索している状況です。まずは、集客が難しくなっている原因を理解することが、効果的な施策を打つための第一歩となります。

広告コストの上昇と反響単価の悪化

住宅業界における広告宣伝費は年々増加傾向にあります。大手住宅メーカーの決算資料を確認すると広告宣伝費は軒並み上昇を続けており、例えば積水ハウスは2025年1月発表の広告宣伝費は588億5,600万円に達し、前年から41億7,900万円のプラス、前年比108%に増加しています。

広告費の高騰は大手企業だけの問題ではありません。Web広告の普及により、地域の工務店や中小住宅会社も広告費が増えています。特にリスティング広告やSNS広告では、入札形式の課金方式を採用しているため、競合が増えるほど広告単価が上昇し、同じ予算でも以前より少ない反響しか得られない状況です。結果として、1件の問い合わせや来場を獲得するための「反響単価」が悪化し、集客効率の低下に悩む企業が増えているのです。

Web広告・SNS広告の競争激化

Web広告市場における住宅業界の競争は激化の一途です。特にリスティング広告やInstagram広告は、かつては比較的低コストで効果を上げられる手法でしたが、現在では予算を十分に確保しなければ成果に結びつきにくくなっています。

前記したように、多くの企業がWeb広告に参入したことによる単価上昇は大きな問題です。また、都市部の競合他社が郊外エリアの土地を仕入れ、そのエリアで広告配信を行うケースも増加しており、これまで競合が少なかった地域でも競争が激化しています。配信エリアや配信設定の重要性が増す一方で、広告の質と配信予算額の両面で競合他社と比較されるため、中小規模の住宅会社にとっては厳しい環境です。

従来のチラシやポスティングの効果低下

紙媒体からデジタルへの移行が進む中、従来型の集客手法であるチラシやポスティングの効果は相対的に低下しています。ただし、住宅業界においてはチラシの効果は依然として一定の有効性はあり、チラシを見ての問い合わせや来場に至ることもあるため無視できません。

しかし課題も存在します。チラシは捨てられやすいため、手に取ってもらえるようにデザインや仕様を工夫する必要があります。また、ポスティングを行う際に競合する工務店やハウスメーカーのチラシも一緒に配布されるケースがあり、自社チラシの優位性を保つのが難しくなっています。さらに、Web広告と比べてまとまった費用が必要となることが一般的で、1回の実施だけでは必ずしも効果が出るわけではないため、継続的な投資が求められます。

消費者の情報収集行動の変化

国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査」
国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査」より

住宅購入検討者の情報収集行動は大きく変化しています。国土交通省の「令和6年度住宅市場動向調査」では、物件・施工者に関する情報収集方法について「インターネットで」と選択した割合が年々増加しています。

特に注目すべきは、SNSを活用した情報収集の急増です。

And Doホールディングス「第2回不動産売却・購入に関するインターネット調査」
And Doホールディングス「第2回不動産売却・購入に関するインターネット調査」より

And Doホールディングスが2024年5月に発表した「第2回不動産売却・購入に関するインターネット調査」によると、自宅購入者の4人に1人がInstagramで知識や情報を収集していることが判明しています。

こうした変化の背景には、消費者が企業側の発信する情報よりも、実際に住宅を購入した人々のリアルな情報を求めるようになったことがあります。SNSでは良い面も悪い面も包み隠さず明かされているため、より信頼性の高い情報として受け止められていると考えられます。消費者は複数の情報源から情報を収集し、じっくりと比較・検討した上で意思決定を行う傾向が強まっています。

「住宅購入の検討期間」が長期化している

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)2025年版「不動産情報サイト利用者意識アンケート」
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)2025年版「不動産情報サイト利用者意識アンケート」より

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)の2025年版「不動産情報サイト利用者意識アンケート」によると、売買において住まい探しを始めて ら契約までに要した期間については、3カ月以上の割合が合計で49.3%と、前年より4.4ポイント増加しています。このアンケートでは中古物件やマンションの購入者も対象であることから、新築住宅の購入においては、さらに長期化している傾向にあると考えられます。

つまり、検討期間の長期化により、成約のためには単なる集客だけでなく、顧客との接点を維持し続けるための仕組みづくりが不可欠となっています。

オンラインとリアルを融合できていない企業が多い

デジタル化が進む中、オンライン施策とオフライン施策を適切に組み合わせられていない住宅会社が少なくありません。

消費者はオンラインとオフラインの両方を使い分けながら情報収集を行っており、どちらか一方に偏った戦略では十分な成果を上げることができません。

オンラインで情報を収集した後に実際の展示場を訪れる、あるいはSNSで見た施工事例について問い合わせるといった、オンラインとオフラインが連動した顧客体験を設計できるかどうかが、集客成功の鍵を握っています

住宅会社・工務店が取り入れるべき集客アイデア

集客環境が厳しさを増す中、住宅会社や工務店はオンライン・オフライン双方の手法を効果的に組み合わせ、さらにDXを活用することで競争力を高める必要があります。現代の消費者行動に即した具体的な集客アイデアをご紹介します。

オンライン集客アイデア

デジタル化が進む現代において、オンライン集客は住宅会社にとって避けて通れない施策です。特にスマートフォンを使った情報収集が主流となった今、効果的なオンライン集客戦略を構築することが重要です。

ホームページ・SEO対策の見直し

自社ホームページは24時間365日稼働する営業ツールです。しかし、ただホームページを持っているだけでは不十分です。検索エンジンで上位表示されるためのSEO対策を継続的に実施し、「地域名+注文住宅」「地域名+工務店」といったキーワードで検索された際に自社サイトが表示されるよう最適化しましょう。

ホームページには施工事例を豊富に掲載し、写真だけでなく建築主のこだわりポイントやコスト感も併せて紹介することで、訪問者が具体的なイメージを持ちやすくなります。また、住宅性能や構造に関する詳細な情報、家づくりの流れ、資金計画のシミュレーションツールなど、顧客が求める情報を網羅的に提供することで、信頼性を高めることができます。

Googleマップ・MEO対策

MEO(Map Engine Optimization)対策は、地域密着型ビジネスである工務店にとって非常に効果的な集客手法です。スマートフォンの普及により、多くの人がGoogleマップを通して近くの工務店や業者を検索しています。

MEO対策の基本は、Googleビジネスプロフィールへの正確な情報登録です。住所、電話番号、営業時間などの基本情報を最新かつ正確に記載し、施工事例の写真を定期的に追加することで、検索結果での上位表示を目指します。特に重要なのが口コミの獲得と返信です。実際に施工したお客様から口コミを投稿してもらい、それに対して丁寧に返信することで、信頼度が向上し新規顧客の獲得につながります。

MEO対策は無料で始められる上、住宅業界ではまだ積極的に取り組んでいる企業が多くないため、早期に着手することで競合他社との差別化を図ることができます。

Instagram・YouTube・TikTok活用

SNSは住宅会社にとって強力な集客ツールです。特にInstagramは視覚的な訴求に優れており、施工事例や完成見学会の様子を美しい写真や動画で発信することで、潜在顧客の興味を引くことができます。ハッシュタグを効果的に活用し、「#注文住宅」「#マイホーム計画」「#地域名+工務店」などのキーワードで検索されやすくすることも重要です。

YouTubeでは、施工プロセスの紹介動画や実際に建てたお客様のインタビュー、住宅性能の解説動画などを公開することで、より深い情報を提供できます。動画は文字や静止画よりも多くの情報を伝えることができ、視聴者の理解を深めるのに効果的です。

TikTokは若年層へのアプローチに有効で、短い動画で住まいづくりのポイントや施工中の面白いシーンを紹介することで、親しみやすさを演出できます。

Web広告(リスティング/SNS広告)の活用法

競争が激化しているWeb広告ですが、適切に運用すれば依然として有効な集客手段です。リスティング広告では、「注文住宅+地域名」「新築+地域名」といった顕在層が検索するキーワードに絞って出稿し、費用対効果を高めることが重要です。

SNS広告では、ターゲット層の年齢、居住地域、興味関心などを細かく設定できるため、無駄な広告費を抑えつつ効率的にアプローチできます。特にFacebook広告やInstagram広告では、施工事例の美しい写真を活用したビジュアル訴求が効果的です。ただし、広告の質と配信予算額を競合と比較されるため、クリエイティブの質を高め、適切な予算配分を行うことが成功の鍵となります。

LINE公式アカウント・メールマーケティング

LINE公式アカウントは、顧客との継続的なコミュニケーションツールとして活用できます。見学会の案内や新着施工事例の通知、住まいづくりに役立つ情報の配信などを通じて、潜在顧客との関係を維持できます。LINEのステップ配信機能を活用すれば、資料請求後や見学会参加後など、顧客の状況に応じた情報を自動的に配信することも可能です。

メールマーケティングでは、定期的なニュースレターの配信や、資金計画セミナーの案内、期間限定キャンペーンの告知などを行います。開封率やクリック率を分析しながら、効果的なメッセージングを追求していくことが重要です。

ブログ・施工事例コンテンツの強化

自社ブログでは、住まいづくりに関する有益な情報を継続的に発信します。「住宅ローンの選び方」「土地選びのポイント」「断熱性能の重要性」といったテーマで記事を作成し、SEO対策も意識しながら検索流入を増やします。

施工事例コンテンツは、写真だけでなく建築主の要望、設計のポイント、使用した素材、コスト感などを詳細に記載することで、閲覧者が自分の家づくりをイメージしやすくなります。ビフォーアフターの写真や間取り図、3Dパースなども併せて掲載すると、より理解が深まります。

オフライン(リアル)集客アイデア

デジタル化が進む一方で、住宅という高額商品においては実際に見て、触れて、体験することの重要性は変わりません。オフラインの施策は、オンラインで得た興味を確信に変える重要な役割を果たします。

完成見学会・構造見学会の開催

完成見学会は、実際の住まいを体験できる最も効果的な機会です。建築主の了解を得て、引き渡し前の住宅を一般公開することで、訪問者は間取りや動線、使い勝手、素材感などをリアルに確認できます。見学会では、設計のポイントや採用した技術、コストダウンの工夫などを丁寧に説明し、来場者の疑問に答えることが重要です。

構造見学会は、完成後には見えなくなる構造部分を見せることで、住宅性能や施工品質への信頼を高めることができます。断熱材の施工方法、耐震構造、気密性能などを実際に確認できるため、性能にこだわる顧客層へのアピールに効果的です。

OB顧客からの紹介・口コミ施策

既存顧客からの紹介は、質の高いリードのひとつです。OB顧客との良好な関係を維持するため、定期点検やアフターサービスを丁寧に行い、満足度を高めることが重要です。紹介制度を設け、紹介いただいたお客様に特典を提供することで、紹介を促進できます。

また、OB顧客の声をWebサイトやSNSで紹介することで、信頼性を高めることができます。実際の建築主の生の声は、潜在顧客にとって最も参考になる情報の一つです。

地域イベント・相談会の開催

地域のイベントへの参加や自社主催の相談会開催は、地域密着型の工務店ならではの強みを活かせる施策です。住まいづくり相談会、資金計画セミナー、土地探しセミナーなど、テーマを明確にしたイベントを定期的に開催することで、潜在顧客との接点を作ることができます。

地域のお祭りやマルシェなどに出店し、企業としての存在感を示すことも有効です。直接的な受注につながらなくても、地域での認知度向上や親しみやすさの醸成に貢献します。

チラシ・ポスティングの効果的な配布エリア設計

チラシやポスティングの効果を高めるには、配布エリアの戦略的な設計が重要です。過去の受注実績を分析し、反響率の高いエリアを特定して集中的に配布することで、費用対効果を高めることができます。

また、新規分譲地や新築マンションが多いエリア、子育て世帯が多いエリアなど、ターゲット層が多く住むエリアを選定することも効果的です。チラシのデザインは、競合他社との差別化を意識し、手に取ってもらえるような工夫を凝らすことが重要です。

地域企業・自治体とのコラボレーション

地域の企業や自治体と連携することで、新たな顧客層にアプローチできます。例えば、地元の金融機関と提携して住宅ローン相談会を開催したり、自治体の移住促進事業に協力して移住希望者向けの住宅を提案したりすることができます。

地域の不動産会社との連携も有効です。土地情報を共有し、土地購入から住宅建築までワンストップで対応できる体制を構築することで、顧客の利便性を高めることができます。

DX活用による集客アイデア

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、住宅業界にも大きな影響を与えています。テクノロジーを活用することで、新しい顧客体験を提供し、競合他社との差別化を図ることができます。

AI・チャットボットによる資料請求・来場誘導

WebサイトにAIチャットボットを導入することで、24時間365日、顧客からの問い合わせに自動対応できます。よくある質問への回答、資料請求の受付、見学会の予約受付などをチャットボットが担うことで、営業時間外でも顧客対応が可能になります。

AIは顧客の質問内容から興味関心を分析し、適切な情報を提供したり、最適なタイミングで営業担当者につないだりすることができます。これにより、問い合わせの取りこぼしを防ぎ、成約機会を最大化できます。

非対面・24時間対応を実現する「無人内見」

コロナ禍をきっかけに、非対面での営業活動の重要性が高まりました。この流れを受けて注目を集めているのが「無人内見」の仕組みです。

無人内見システムを導入することで、顧客は営業担当者の立ち会いなしに、自分の都合の良い時間にモデルハウスや完成物件を見学できます。予約から入退室管理、物件情報の提供まで、全てをシステムで自動化することで、人手不足の解消と顧客利便性の向上を同時に実現できます。

特に「無人内見くん」を活用すれば、スマートロックとの連携により安全かつスムーズな無人見学を実現できます。顧客は自分のペースでじっくりと物件を確認でき、営業担当者からのプレッシャーを感じることなく検討できるため、満足度の向上につながります。また、企業側も営業担当者の時間を有効活用でき、より多くの見学希望者に対応することが可能になります。

人手不足でも成約機会を逃さない仕組み化集客

住宅業界では人手不足が深刻な課題となっています。限られた人員で最大の成果を上げるには、業務の仕組み化・自動化が不可欠です。

顧客管理システム(CRM)を導入し、問い合わせから契約までの全プロセスを可視化・管理することで、フォロー漏れを防ぎます。また、マーケティングオートメーション(MA)ツールを活用すれば、顧客の行動履歴に基づいて適切なタイミングで最適な情報を自動配信できます。

例えば、資料請求した顧客には1週間後に施工事例集を送信し、メールを開封した顧客にはさらに詳細な情報を提供するといった、段階的なナーチャリングを自動化できます。これにより、少ない人員でも多くの見込み客を育成し、成約機会を最大化することが可能になります。

テクノロジーで変わる住宅営業の現場

VR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術を活用することで、まだ建っていない住宅を立体的に体験してもらうことができます。VRゴーグルを使えば、設計段階の住宅内を歩き回り、間取りや内装、眺望などを確認できるため、顧客の理解が深まり、契約率の向上につながります。

また、タブレット端末を活用したプレゼンテーションにより、その場で間取りの変更案を提示したり、仕様変更によるコスト変動をリアルタイムで計算したりすることができます。こうしたテクノロジーの活用により、顧客とのコミュニケーションがスムーズになり、意思決定のスピードが上がります。