IT重説はスマートフォンでも実施できます。2017年10月の本格運用開始以降、パソコンやタブレットだけでなく、スマートフォンでもビデオ通話を使った重要事項説明が認められてきました。ただし、画面に映る宅建士証の文字が読めるか、通信が途切れず安定するかといった、管理会社が事前に確認しておくべき法的・技術的な要件があります。

そこで本記事では、IT重説をスマホで実施する際の法的要件・実施手順・トラブル対処を管理会社の実務目線で整理し、当日の中断や契約遅延を防ぐ運用を自社で組み立てられる状態を目指します。

なお、重説の非対面化や不動産業務の効率化を進めるなら、内見を24時間可能にする無人内見くんもご検討ください。スマートロック連携により鍵の受け渡しを自動化し、24時間365日の内見対応を実現することで、不動産業務の効率化と機会損失の防止を強力にサポートします。

IT重説はスマホで実施できる? 利用条件と法的要件

IT重説はスマートフォンでも法的に実施できます。ただし無条件ではなく、宅建士証の視認性確保や改変防止措置の確認など、管理会社が事前に検証しておくべき要件が存在します。これらを当日まで放置すると、画面で宅建士証が読めない、書面の改変防止措置を確認できないといった理由で、実施そのものが中断するリスクを抱えることになります。

スマホで満たすべき条件は大きく3つあります。画面の視認性、通信環境の安定性、そしてカメラ・マイク機能です。以下では、IT重説の制度的な前提を確認したうえで、この3条件と改変防止措置の制約を順に見ていきます。

IT重説の概要と法改正の経緯

IT重説とは、宅地建物取引業法第35条に基づく重要事項の説明に、テレビ会議などのITを活用する仕組みです。一定の要件を満たす場合に限り、対面による説明と同様に取り扱われる制度で、賃貸取引では2017年10月に本格運用が始まりました(出典:国土交通省「報道発表資料:平成29年10月1日より賃貸取引に係るIT重説の本格運用を開始」2017年)。

その後、2021年には売買取引にも対象が広がりました。さらに2022年5月の宅地建物取引業法施行規則の改正で、重要事項説明書を電子書面で交付できるようになり、書面の電子化までを含めた非対面フローの環境が整いました(出典:国土交通省「報道発表資料:不動産取引時の書面が電子書面で提供できるようになります」2022年)。

スマホで実施するために必要な3つの条件

スマートフォンでIT重説を行うには、画面の視認性、通信環境、カメラ・マイクの3点が満たされている必要があります。それぞれにスマホ特有の懸念があり、機種や利用環境によっては基準を満たせないこともあるため、順に確認します。

1. 画面サイズと解像度(宅建士証が読めるか)

IT重説では、入居者の画面に宅建士証を映して提示します。このとき、宅建士証に記載された文字が確認できる程度の大きさや、拡大機能、解像度などが必要です(出典:公益社団法人 全日本不動産協会「IT重説のためのIT環境」2022年)。スマートフォンは画面が小さいため、機種によってはこの基準を満たせない可能性があります。

古い端末や画面の小さい端末では、文字が潰れて読めないこともあるため、事前の確認が欠かせません。本番前に複数の端末や画面サイズで表示をチェックしておくと安心です。

2. 安定した通信環境(モバイル回線のリスク)

重説は一定の時間を要するため、通信が途切れない環境が前提になります。スマートフォンのモバイルデータ通信では、長時間のやりとりで通信量が上限を超え、速度制限がかかるリスクがあります。

速度が落ちると音声や映像が劣化し、説明の続行が難しくなるため、入居者にはWi-Fi環境での接続を案内してください。

3. カメラ・マイク機能の確認

IT重説は、宅建士と入居者が互いの映像と音声をリアルタイムでやりとりしながら進める制度です。カメラとマイクが正常に動作し、双方向の通信が途切れなく行えることが法的な前提になります。

スマートフォンであれば標準でカメラもマイクも備わっていますが、ケースで覆われていたり権限設定がオフになっていたりすると使えないため、当日までに動作を確かめておく必要があります。

改変防止措置がスマホで確認できない場合の対応策

電子書面で重要事項説明書を交付する場合、書面が改ざんされていないことを示す改変防止措置が施されます。ところが、スマートフォンではこの改変防止措置(署名パネルなど)を確認できない仕様のケースがあり、法的要件の充足に懸念が生じます(参考:国土交通省「書面電子化・IT重説マニュアル

ハンディガイド」

改変防止措置の確認が必要な書面についてはパソコンでの閲覧を推奨する案内を標準化するか、重要事項説明書を紙面で事前送付しておく方法が有効です。

入居者がパソコンを持たない場合に備え、タブレットの貸出を選択肢に加えておくと、端末を理由にした断念を防げます。

スマホでのIT重説はどう進める? 事前準備から完了までの流れ

スマホでのIT重説は、事前準備・接続テスト・当日実施・事後処理の4段階を標準フローとして運用すると、入居者がスマートフォン一台でも契約完了まで円滑に進められます。この流れを管理会社側で型にしておけば、担当者ごとの対応のばらつきを抑えられます。具体的には、次の順に進めます。

  1. 同意取得・書面送付・端末確認の事前案内
  2. 接続テストで映像・音声・宅建士証の視認性を確認
  3. 当日の実施(宅建士証提示から説明完了まで)
  4. 説明後の署名・返送と録画データの取り扱い

1. 同意取得・書面送付・端末確認の事前案内

最初に行うのは、入居者からIT重説の同意を取得することです。同意は口頭で済ませず、メールや書面、LINEなど証跡が残る方法で取得してください。後日「同意していない」というトラブルになった際に、記録が残っていれば対応できます。

同意が取れたら、重要事項説明書を当日までに入居者の手元へ届けます。電子書面でも郵送でも構いませんが、電子書面の場合は入居者の端末でPDFが問題なく開けるかも確認しておきます。あわせて、当日使用するツールの名称と参加方法、端末の最低要件(カメラ・マイクが使えること、Wi-Fi環境が望ましいこと)を事前に伝えておくと、当日の手戻りを減らせます。

2. 接続テストで確認すべきポイント

接続テストの目的は、当日の中断を未然に防ぐことです。本番前に管理会社と入居者をつないでおき、問題があれば事前に解消します。確認すべき項目は、映像と音声の品質、画面共有が機能するか、そして宅建士証の文字が画面上で読めるかです。

特に宅建士証の視認性は、当日になって読めないと進行できないため、双方で必ず確かめてください。

スマートフォン利用時には、固有のチェックポイントが加わります。モバイルデータ通信では通信量超過で速度制限がかかるおそれがあるため、Wi-Fi環境での接続を事前に案内しておきます。あわせて、長時間の説明に耐えられるようバッテリー残量を確認してもらい、充電しながらの参加を促してください。

なお、駅やカフェなどのフリーWi-Fiはセキュリティ面の不安があるため、自宅の回線を使ってもらうほうが安全です。

3. 当日の実施フロー(宅建士証提示から説明完了まで)

当日はまず、宅建士が画面越しに宅建士証を提示し、入居者の本人確認を行うところから始まります。その後、重要事項説明書に沿って説明を進め、すべての項目を説明し終えたら完了です。スマホ画面越しという制約を踏まえ、開始時と説明中それぞれで注意すべき点があります。

宅建士証の提示では、画面に大きく映るようカメラに近づけて見せ、入居者に氏名と登録番号を読み取って確認してもらいます。スマホのカメラはピントが合いにくいことがあるため、明るい場所で、手ぶれしないよう静止して提示してください。逆光になると文字が見えづらくなるので、照明の向きにも気を配ります。

説明中は、スマホ画面越しだと入居者の表情や手元が見えにくく、理解度を読み取りづらくなります。一方的に読み進めず、区切りごとに「ここまでで分からない点はありませんか」と確認を入れると、聞き逃しや誤解をその場で拾えます。

4. 説明後の署名・返送と録画データの取り扱い

説明が完了したら、重要事項説明書への署名・捺印を回収します。電子署名で対応するか、書面を郵送で返送してもらうかのいずれかです。電子契約で完結させる場合は、紙の契約書に必要な印紙税がかからない利点もあります。

IT重説を録画した場合は、そのデータの扱いを社内ルールとして決めておきます。録画には入居者の顔や音声といった個人情報が含まれるため、保管期間の目安、格納場所、廃棄の基準を定め、担当者が個別判断で扱わないようにします。管理ルールがないまま録画データが散在すると、情報漏えいのリスクにつながります。

スマホのIT重説でトラブルが起きたら? 3つの問題パターンと対処法

スマホ利用時のIT重説トラブルは、通信障害と視認性不足に集中します。国土交通省の調査でも、発生したトラブルの約7割が機器やネット回線に起因すると判明しており(出典:LIFULL HOME’S Business(国土交通省調査)「IT重説等の実施状況と今後の対応について」2024年)、画面が小さく回線も不安定になりやすいスマートフォンでは、このリスクがさらに高まります。

裏を返せば、中断時の再開フロー、画面共有の代替手段、入居者のリテラシーに応じた端末切替の基準をあらかじめ決めておけば、当日の対応が担当者の力量に左右されなくなります。以下、起きやすい3つのパターンごとに、問題と対処法を見ていきます。

1. 通信障害で中断した場合の再開手順

説明の途中で通信環境や機器のトラブルが発生したときは、それ以降の部分からのやり直しになります。やり直しの方法は、環境を整えて再度IT重説を行うか、対面説明へ変更するかのいずれかを選択できます(出典:ハウスコム(国土交通省調査)「ITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」2022年)。最初からやり直す必要はないため、どこまで説明が進んでいたかを把握しておくことが再開の鍵になります。

実務としては、まず再接続を試みて環境が整えば中断箇所から続行し、再接続を繰り返しても改善しない場合は対面説明へ切り替える、という判断基準を社内で決めておきます。あわせて、中断した箇所、経過時間、再接続の可否を記録するテンプレートを用意しておくと、誰が対応しても同じ手順で再開でき、属人的な対応を防げます。

2. 画面が小さく書面や宅建士証が確認できない場合

スマートフォンはパソコンやタブレットより画面が小さいため、重要事項説明書の文字や図面が確認しづらく、入居者の理解度に影響することがあります。文字が読めないまま説明が進むと、入居後のトラブルにつながりかねません。

対応策は、事前に送付済みの紙面またはPDFを入居者の手元に置いてもらい、画面共有は説明箇所を指し示す補助として使う運用です。読む対象を手元の書面に置き換えれば、画面の小ささに左右されずに内容を追えます。拡大表示の操作方法を案内し、それでも視認性が改善しない場合は、タブレットやパソコンへの切り替えを促してください。

3. ツール操作に不慣れな入居者への誘導シナリオ

ZoomやTeamsなどのアプリインストールに抵抗がある入居者には、Google Meetのようにブラウザだけで参加できるツールを選択肢として提示します。インストール不要の方法を用意しておけば、操作のハードルを理由にした断念を減らせます。

高齢の入居者や操作が苦手な入居者には、事前に参加手順を図解したマニュアルを送り、接続テストの時間を多めに取っておくと安心です。ここで、パソコン推奨を告げると手間を嫌って離脱する懸念もあるため、「スマホでもできますが、見やすさの観点でパソコンをおすすめします」のように選択肢を残した言い回しを使ってください。

それでも事前テストで映像や音声のやりとりが成立しない場合は、無理にIT重説を続行しません。改善が見込めないなら対面に切り替える、という判断基準を社内で定めておけば、当日になって慌てずに済みます。

IT重説のスマホ対応で何が変わる? 導入効果と運用上の注意点

IT重説をスマホ対応すると、管理会社は複数の業務効果を得られます。

ただし、運用上の注意点を見落とすと、かえってトラブルのリスクが高まります。ここでは、スマホ対応で広がる効果と、見落としやすい注意点の両面を整理します。

スマホ対応で広がる3つの導入効果

スマホ対応の効果は、遠方対応の拡大、来店工数の削減、録画によるエビデンス保全の3つに整理できます。それぞれが管理会社の実務にどう効くかを順に見ていきます。

1. 遠方入居者への対応拡大と機会損失の防止

転居を伴う入居者は、契約のためだけに遠方から来店するのが難しいケースが

あります。スマートフォンで重説を受けられれば、来店を前提にしていた契約機会の損失を防げます。進学や転勤で遠方から部屋を探す層を取りこぼさずに契約まで進められる点は、管理会社の機会拡大に直結します。

2. 来店対応の工数削減と業務効率化

来店が不要になることで、重説の日程調整が柔軟になります。店舗の営業時間や来店枠に縛られず、双方の都合に合わせて設定できるため、管理会社側の対応工数を抑えられます。

入居者にとっても交通費や移動時間の負担が消え、契約までのハードルが下がります。

3. 録画によるエビデンス保全とトラブル防止

IT重説は録画が可能です。入居後に「その説明は聞いていない」といったトラブルが起きた際、録画データが当時の説明内容を示すエビデンスになります。口頭でのやりとりが記録として残ることは、対面の重説にはない利点です。

電子契約を実施している不動産会社は2024年時点で18.74%にとどまります(出典:LIFULL HOME’S Business「2024年繁忙期実態調査」2024年)。非対面対応がまだ広く普及していない今の段階でスマホ対応に踏み出すことは、入居者の利便性を訴求できる材料となり、競合との差別化につながります。

運用で見落としやすい2つの注意点

効果の裏側で、スマホ対応には見落としやすい注意点が2つあります。入居者の理解度低下と、録画データの管理です。

1つ目は、理解度の低下リスクです。自宅からスマートフォンで受けるIT重説は手軽な反面、リラックスした環境ゆえに集中力が落ちやすく、小さな画面では重要事項を聞き逃しやすくなります。聞き逃しが契約後のトラブルに発展しないよう、説明の区切りごとに理解を確認し、特に重要な条項は要点を復唱して念を押してください。

2つ目は、録画・録音の同意と個人情報の管理です。録画や録音を行う場合は、事前に入居者の同意を得る必要があります。利用目的をあらかじめ明示し、説明の途中で不適切な情報が映り込んだ場合の中断・再開のルールも定めておきます。

録画データは個人情報を含むため、前章で触れた保管・廃棄ルールとあわせて、社内で一貫した取り扱いを徹底してください。

まとめ

IT重説はスマートフォンでも法的要件を満たせば実施できます。

鍵になるのは、宅建士証の視認性や改変防止措置といった要件を満たすための事前チェック、当日の実施手順、そしてトラブル時の対処、この3点を標準化することです。型ができていれば、当日の中断や契約遅延を抑えながら、管理会社の業務効率と非対面対応力を高められます。

重説の非対面化が整ったら、次のステップは内見の非対面化です。ショウタイム24が提供する無人内見くんは、スマートロックとオンライン予約によって24時間の無人内見を可能にするシステムです。重説に加えて内見も来店不要にすれば、物件探しから契約までを来店ゼロでつなぐフローが完成し、遠方の入居希望者を取りこぼさない体制を築けます。