不動産業務の非対面化は可能!コロナ禍に求められるテクノロジー活用とは

非接触における不動産営業

新型コロナの影響によって、私たちの生活様式も急激な勢いで変化しています。リモートワークや在宅ワークといった働き方を取り入れている人も多いでしょう。

加えて、衣食住の住の要ともなる不動産業界もまた、時代の変化に対応していかなければなりません。今回はコロナ禍において日々進んできている、不動産業務のオンライン化について紹介していきます。

コロナ禍で求められている不動産業界の非対面業務

多岐に渡る不動産業務ですが、非対面・非接触だけで進めるのはとても難しいのが現状です。

コロナ禍において、課題が残る不動産業務とはどういったものがあるのでしょうか。

コロナ禍で物件の内見が接客の課題に

2020年5月にLIFULL HOME'Sが発表した「第3回 新型コロナウイルス感染症に対する不動産事業者の意識調査」によると、現時点でコロナの影響を受けていると答えた企業のうち約74%の企業が物件の内見者が減少したと回答しています。

第3回 新型コロナウイルス感染症に対する不動産事業者の意識調査

コロナ禍において、人との距離や接触を避けなければいけないなかで、物件の内見は不動産業者とお客様が、家やアパートの一室という狭い空間に一緒にいることになります。一時的ではありますが、マスクを着けていたとしても気になる人はいるはずです。

不動産の契約における非対面化

不動産の賃貸において、敷金・礼金などの決済は口座振替やクレジットカード決済など、既に非対面サービスの活用が進んでいます。

しかし、売買などの決済金額が大きい場合は、買主側と売主側、場合によっては仲介業者や司法書士といった人が立会いのもとで行われることが多く、非対面で行われるケースはあまり無いでしょう。

不動産の売買契約の際に発生する手付金は、現金か預金小切手で支払われることが多いため、対面を余儀なくされています。

また、契約書の署名と捺印と同時に現金のやり取りが行われたほうが、買主と売主双方にとって安全であり、契約書類などに関しても内容を確認しながら安心して契約ができるので、大きな金額を伴う不動産売買においては、基本的に契約と決済は関係者全員が立会いケースが主流です。

しかし、新型コロナにより、契約決済の時になって、関係者が新型コロナに感染し、決済が遅れるなどの事例が少なからずあり、大勢の人間が一堂に会することでコロナの感染を恐れ、決済場所へ行きたくないと感じている人も多いようです。

賃貸・売買ともに非対面契約が求められている

2020年12月に不動産ポータルサイトのアットホームが発表した「ニューノーマル時代の住まい探し」によると、賃貸・売買それぞれの家探しにおいて内覧や申込み、重要事項説明などをオンラインでやりたいと感じている人が一定割合いるという結果が出ています。

Q. 今後、住まいを探す際、内見はどのように行いたいですか?(複数回答)

今後、住まいを探す際、内見はどのように行いたいですか?賃貸

今後、住まいを探す際、内見はどのように行いたいですか?売買

 

Q. 今後、住まいを探す際、申込の手続きはどのように行いたいですか?(択一)

今後、住まいを探す際、申込の手続きはどのように行いたいですか?賃貸

今後、住まいを探す際、申込の手続きはどのように行いたいですか?売買

 

Q. 今後、住まいを契約する際、重要事項説明と契約は、対面もしくはオンラインのどちらで行いたいですか?(択一)

今後、住まいを契約する際、重要事項説明と契約は、対面もしくはオンラインのどちらで行いたいですか?

 

なるべく人との接触を避けたいコロナ禍において近距離で対面しての契約に不安を感じる人も多く、店内の感染防止対策をしてもなお、完全に対面への不安を拭い去るのは難しいでしょう。

後ほど詳しく解説していますが、賃貸においては、2018年からIT重説が始まり、徐々にオンラインでの不動産取引が進められていましたが、契約の電子契約化などは、法律の規制があり賃貸・売買共に完全なオンライン完結は難しい状況でした。

しかし、2020年9月から、賃貸取引における重要事項説明書等の書面の電子化に関する社会実験が始まり、2021年3月からは、売買取引における重要事項説明書等の書面の社会実験も開始され、近い将来賃貸・売買両取引での重説書面が電子化される見込みとなっています。

実際に行われている非対面の不動産業務

コロナ禍において、不動産業界各社はオンライン化への移行を次々と進めてます。

どのように不動産業務がオンライン化されているのか、その一部を紹介していきましょう。

不動産各社が取り入れるオンライン内見サービス

大手不動産会社各社は、コロナ禍において非対面でも内見可能なリモート内見のシステムを独自に構築するケースが増えています。

住友不動産新築マンションの物件見学からお引渡しまで「非対面」で完結『リモート・マンション販売』を導入

大京穴吹不動産「オンライン相談」の対応について

各社、顧客の新しいニーズに対応するべく、内見や接客の非対面化を進めています。

しかし、こういったサービスを独自で開発し提供しているのは、不動産業界でもごく一部です。そういったなかで、一般の不動産会社でも非対面での内見案内や無人内見ができるサービスがあります。

それがショウタイム24が提供している「MUJIN24」、「無人内見システム」です。

「無人内見システム」を活用すれば、土日・平日を問わず、購入検討者が気軽に無人の物件を内見することが可能です。

購入検討者はスマホやPCから、希望の物件や日時に内見予約を行います。内見当日は直接物件に訪れ、スマートフォンに表示される開錠ボタンをタップするだけで物件に入れ、自由に内見が可能です。

室内に設置されたウェブカメラによって内見者の状況も確認でき、セキュリティ面も万全です。

オンラインで非対面でも接客ができる

実際に店舗に行かなくても、リモートを使った非接触型の接客を導入している企業もあります。

東急リバブルでは、物件の相談から商談まで全てリモートでできる「オンライン接客」を2020年から一部の物件で開始しました(東急リバブルモデルルーム見学~商談まで「オンライン接客」を全物件に導入」)。

住友不動産も同様にリモートでの一部の物件に関する接客をオンラインで行っています(住友不動産「住友不動産 リモート販売センター」 開設」)。

また、日本情報クリエイトが開発した「非対面仲介サービス」は物件の問い合わせから、物件の内見、契約まで全てオンライン上で行うことができるサービスがあります。

このシステムを活用すれば、大手不動産会社のように自社でオンライン接客のシステムを作らなくても、非対面でお客様の案内をすることができるでしょう。

非対面決済

非対面で行えるオンラインでの決済手段としてはネットバンキングを利用した方法があります。ネットバンキングならば、ほぼリアルタイムで決済代金の処理ができますし、わざわざ場所を選んで集まる必要がありません。

例えば東急リバブルでは2020年1月にエスクロー・エージェント・ジャパンと業務提携を行い、信託口座を利用したキャッシュレスサービスを開始しました。

現在はまだ首都圏と一部の中部エリアのみでの運用ですが、今後は全国的な展開もあり得るかもしれません(「キャッシュレスサービスを首都圏全店と関西・中部エリアへ拡大 」)。

また、お客様側が決済場所に行くことに不安がある場合は司法書士や仲介業者に決済の委託をしてもらうのも一つの方法です。

委任状を書いてもらう必要がありますが、これによってお客様ではなく代理人の方に来てもらい速やかに契約・決済を行うことが出来るでしょう。

不動産取引でオンライン化が進む

不動産の賃貸、売買において絶対に避けられないものとして重要事項説明書の説明があります。

重要事項の説明は不動産取引において義務化させられていましたが、2017年に賃貸借契約において、2021年4月には売買契約においても「IT重説」が解禁されました。

そもそも「IT重説」とはどのようなものなのでしょうか。最後に「IT重説」を含めたオンラインにおける不動産取引について解説していきます。

「IT重説」とは

「IT重説」とはZoomなどのテレビ会議システムを使用し、パソコンやスマートフォンの画面上で重要事項説明を行うことを指します。

画面上に重要事項説明書の書面を相手に提示しながら、説明を行うので遠隔地にいながら対面で行う重要事項の説明とやることは変わりません。

画面に映っているお客様が契約者本人なのか確認するために、運転免許証やマイナンバーカードといった顔写真付きの身分証を提示してもらう必要がありますが、わざわざお客様本人が実店舗に足を運ぶ手間を省くことが出来ます。

この「IT重説」を行うためにはお客様のパソコンやスマートフォンなどの設定、場合によってはウェブカメラやマイクが必要になる場合もあるので、「IT重説」を行う際はお客様のデジタル機器の環境を聞いてから行うほうがいいでしょう。

売買契約における「IT重説」の有用性

今まで不動産の売買契約において重要事項説明というのは、不動産業者側にもお客様側にも不便さの残る制度でした。

例えば、遠隔地の不動産を購入した場合は、わざわざ遠隔地まで行かなければならず、手間も時間もかかっていました。

しかし「IT重説」を有効活用出来れば遠隔地にいるからも、家の中にいながら重要事項の説明を受けることができます。

また、国交省の実施マニュアルでは「IT重説の録画・録音は、トラブル時の解決手段として有効と考えられる」と明記されているので、承諾を得てではありますが、録画・録音で記録を保存しておくのもトラブル回避に有効でしょう。

「IT重説」から始まるオンライン取引の進歩

「IT重説」以外にもオンラインで取引が出来る業務が増えていきます。

現在でも不動産業界では紙を媒介にした契約書や重要事項説明書の作成が義務づけられていましたが、2021年5月にデジタル改革関連法案が成立されたことにより、紙媒体での書面ではなくても契約を交わせるようになりました。

そもそも何故紙媒体が必要だったかと言いますと、重要事項説明書は説明前にお客様に郵送か直接手渡しをする必要があり、さらに書面での直筆の署名と捺印が必要だったからです。

しかし、今回のデジタル改革関連法案の成立によって、郵送で送っていた書面を電子書面ですぐに送ることができ、契約の際も電子署名での取引が出来るようになる可能性があります。

新型コロナによって、私たちの生活は一変し不動産業界のみならず、様々な業種が非対面でのオンライン化を進めています。

今回のデジタル改革関連法案の成立を皮切りに、今後は不動産業務のオンライン化が急激に変わっていくことでしょう。将来、不動産業務の全てがオンライン化する日が来るかもしれません。

リモートワークが定着しつつある現在では、そういった未来もそう遠くはないでしょう。

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